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2100年02月22日

このサイトについて

どうも、サイトの管理者 さい です。

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posted by さい at 07:50| Comment(4) | TrackBack(5) | 作者より | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年11月17日

呼ばれて・・・

近所をうろついてみた所で、雄二の気分が晴れることは無かった。丁度日が暮れ始め、商店街の通りを歩く人間が増えてきたことも雄二の苛立ちを増長させていた。
商店の軒先の親子連れ、帰宅途中であろうサラリーマン、脇を駆け抜ける小学生。至って普通の日常が、普通であるが故に我慢がならない。雄二が周囲の人間を威嚇する様に睨みつけながら歩くのに合わせ、通行人が道路脇へと寄ってゆく。
ふと雄二の視界に一人の女性が写り込んだ。女は俯きがちに正面から近づいてくる。雄二の存在に気付いてないのか、脇に避けようという気配は無い。
雄二は舌打ちし、わざと歩みを速めた。案の定、肩がぶつかり合う。
「あっ、すいま・・・」
「いてぇなっ、このババアっ」
よろけた女に向って雄二が怒鳴りつけた。女は驚いたのか怯えているのか、青ざめた顔でその場に固まり雄二を見詰める。その表情をみて幾分気分の晴れた雄二は捨て台詞代りに地面に唾を吐き、再び歩き出す。立ち去り際何人かの通行人と目が合った。例外なく目を逸らす彼らの反応に満足し、雄二は口の端を歪める程度の笑みを浮かべた。

部屋に戻った雄二は、再び気色の悪い感情が湧きあがってくるのを感じていた。行き場のない感情を吐き出すかの様に独り毒吐く。
「何が・・・出ていくからだ。」
じわじわと怒りが湧き上がり、テレビの電源を入れる気にさえならない。しかしながらただ寝転がり天井を見詰めていると、益々つい昨日まで傍らにいた女を思い出さずにはいられなかった。
「糞っ。」
怒りにまかせてテーブルの端を蹴り上げる。反動で倒れたグラスが液体をまき散らし、辺りにアルコール臭が漂った。

深夜、得体の知れない物音で雄二は目を覚ました。音は玄関の方から聞こえてくる。
まだ働かない頭を持て余したまま暫く空に視線を泳がしていた雄二だったが、一つの思考に辿り着き一気に意識が冴えてゆく。
・・・帰ってきやがったのか。
素早く半身を起し玄関に振り向く。辺りは暗闇に包まれていたが、窓からこぼれる月明かりで辛うじて様子を窺うことができた。雄二が目を細める。
と、不意に大きな音を立てて鉄製の郵便受けが床に落ちた。突然響き渡った音と目に入った異様な光景に、雄二の体が強張った。
郵便の差し込み口から白く長い指が両手分伸びている。外からの光は人影に遮られており、何者かが室内の様子を窺っているのが分かった。
あまりの不気味さに雄二はほぼ反射的に起き上がった。その拍子に膝がテーブルにぶつかり音を立てる、と同時に差し込み口の指が素早く引っ込み玄関に月明かりが差し込んだ。足音がかなりの勢いで遠ざかってゆく。一瞬雄二は動けずにいたが、不意に怒りが込み上げてくる。立て掛けられたゴルフクラブを手に取り、雄二は勢いよく部屋を飛び出した。手すりに身を乗り出し今だ微かに響く足音の方向に目を向けると、下の通りを駆ける不審者の姿を捉える事ができた。背格好からして女性の様だ。雄二はすぐさまその後を追った。

女が階段を駆け上って行く。雄二はその後を追いつつ笑みをこぼした。女がこのマンションに逃げ込んだのは雄二にとっては好都合に思われた。後は下にさえ逃がさなければ追いつめられる。とはいえ、その姿を見失っては隙を見て逃げられるかもしれない。ラストスパートを掛ける陸上選手のように雄二は足に力を込めた。不意に女が通路に逃げ込んだ。最早袋の鼠と言っていい。安心した雄二は通路に駆け込むと同時に歩を緩めた。
女は振り向くこともなく駆けてゆき、通路の端まで辿り着いた。雄二が追い詰めたと確信したその時、女は部屋の扉を開け放ち中へと飛び込んだ。予想外の行動に一瞬慌てた雄二だったが、自宅を突き止めたことに思い至り再び笑みを浮かべた。ゆっくり呼吸を整えながら扉に近づき、取っ手に手を掛ける。何の抵抗もなくその扉が開いた。
当然鍵が掛かっていると思っていた為に、雄二は面食らい後ずさった。ゴルフクラブを握りしめ警戒したが女が飛びかかってくるような様子は無い。雄二は慎重に扉を開き、玄関脇の電灯のスイッチに手を伸ばした。
明るく照らされた室内を見る限り女の姿は見当たらなかった。しかし何所かに身を隠しているのは間違いないのだ。そう広くはない部屋だ。隠れる場所など限られている。浴室か、或いはトイレの中か。雄二は辺りに気を配りながら先ず手前の扉の取っ手に手を掛けた。
突然凄い勢いで扉が開いた。扉の縁に額を打ち付け、雄二がよろめく。瞬間太ももに燃えるような痛みが走った。反射的に太ももを抑えた為体制が崩れ、その場に倒れ込む。慌てて身を起こした雄二は正面に立つ女の姿を認めた。雄二を睨みつける女の手には小振りのナイフが握られている。身の危険を感じた雄二は咄嗟に両手を掲げ、身を縮めた。しかし女はそれ以上の攻撃を加えようとはせず、身を翻し再び部屋の外へと飛び出していった。
恐怖のあまり、雄二は暫く動けずにいた。恐る恐る太ももの怪我を確かめる。出血はしているがそう深い傷ではない。歩行するにも何ら問題は無いだろう。雄二は安堵したが、次第に怒りが込み上げてきた。
「このままでは済まさないからな・・・。」
呟きながら立ち上がり、部屋を出た雄二は眼前の光景に驚き、身を竦めた。通路の反対側に女が立って雄二を眺めていたのだ。とっくに逃げ去ったものと思い込んでいたため一瞬怯んだ雄二だったが、怯える素振りも見せない女の態度に再び怒りを覚え、声を上げた。
「てめえ、殺してやるからなっ。」
女は意に介する風もなく通路の奥に姿を消した。階段を下りてゆく足音が聞こえる。
「待てっ。」
雄二は再び女の後を追い始めた。
女は先程とは異なり、雄二が後を付いてきているのを確認するように何度も振り返りながら駆けてゆく。その行動に違和感を覚えたものの、からかわれているのだと解釈した雄二は益々逆上しながら女の後を追う。怪我の所為で早く走ることが出来なかったが、怒りに我を忘れた雄二は最早諦めるという選択肢を選ぶ事が出来なくなっていた。

女が林の中に逃げ込んで行く。それを見た雄二は舌を打った。女は木の陰に姿を隠しながら逃げ去るつもりだろう。街頭すらない林の中で女に追いつくのは決して容易くない。
案の定女の姿を見失ってしまった。林の中は思いの他暗く、これ以上探し回っても無駄なように思われる。最悪、暗闇に乗じて再び女が襲ってこないとも限らない。追跡を諦めかけたその時、それが目に入った。人間が倒れていたのだ。
雄二が慎重に近づく。倒れているのは女だ。うつ伏せで顔は見えないが、服装からみて奴に間違いない。しかし、妙だ。女は全く動く気配がない。躓いて倒れているという訳では無さそうだ。女は雄二が傍らに立って尚、動く気配を見せなかった。しかしながら、隙をついて襲ってくる心づもりかも分からない。雄二は慎重に距離をとり、手にしたゴルフクラブで女の肩の辺りに一撃を加えた。衝撃で女の体が揺れる。が、それ以外の動きはやはり全く無い。例え気を失っていたとしても今の攻撃に何の反応も示さないのは有り得ない。雄二は女の体を蹴り上げた。
仰向けに体制を変え女の顔を覗き込んだ瞬間、雄二は悲鳴を上げた。顔が、無い。
女の顔はズタズタに切り裂かれ、夥しい血が微かに月光を反射している。首から下を隠してしまえば、それが人間の頭部であることすら判別できないであろう酷い有様だった。
雄二には訳が分からなかった。女はここで自分の顔をメッタ刺しにして自殺したとでもいうのか。いや、考えられない。こんな真似が自分でできる訳が無い。まともに考えてこの女は誰かに殺されたのだ。
しかし、誰に。こんな短い時間で。それこそ有り得ないのでは・・いや、待て。
雄二は一つの答えに思い至り、戦慄した。
女はとっくの昔に死んでいたのだとしたら。俺が追いかけていたのは、所謂・・・。
「おい、そこで何をしている。」
突然後方から声が聞こえた。雄二が驚いて振り返る。懐中電灯をかざしながら警官が近づいてくるのが目に入り、雄二は安堵の溜息を洩らした。

雄二の説明に刑事が呆れたように首を振った。
「被害者の自宅からお前さんの血液が検出されとるんだがね。」
「だから、連れてこられたんですよ。その女に。で、切りつけられて・・・。」
「しかしねえ、もう死んどる女がねえ・・・それを信じろと。」
「俺にも信じられねえけど、事実だから仕様がないでしょう。多分、見付けて欲しかったとか、そんな感じで。」
刑事がふんと鼻を鳴らし、咥えた煙草に火をつける。刑事は雄二の言い分に些か辟易していた。こんな供述を繰り返すようでは最早まともな取り調べなど出来ようはずもない。精神鑑定までのお茶濁しにすぎないのだ。とはいえ投げ出す訳にもいかない。自分の仕事を呪いつつ、刑事は一枚の写真を雄二に差し出した。
「でもねえ、何でお前さんに。彼女とはどういう関係だったんだ。」
「見たこともない女だったし、俺にもわからな・・・」
机上の写真を見た瞬間、雄二は言葉を失った。
「なんだ、どうした。」
雄二が写真を指差した。
「・・・誰だよ・・・これ。」
雄二の言葉に刑事は同僚と顔を見合わせ、苦笑した。

「どうしたの、あなた。」
「え・・・。」
「いきなり固まっちゃって。」
「いや・・・ニュースだよ。これ、すぐ・・・近くじゃないか。」
テレビ画面を指差しながら妻に答える。動揺を悟られてやしないだろうか。
「ああ、これね。色々噂は聞いたけど、犯人は捕まってるみたいだし。」
「ああ、でも物騒だからな。気を付けないと。」
大丈夫か・・・。しかし、何でこんなことに。
「ホントよね。気を付けないと・・・あなたも。」
不意に寒気を覚える。いや、まさか。
「え・・・ああ・・・そうだな。」

「キヲツケナイト・・・コワイワヨ・・・。」



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posted by さい at 08:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

黒の童話

一人の天使がおりました。
天使の仕事は水汲みでした。
バケツに水を汲むのです。
一つのバケツに一掬い。次のバケツも一掬い。
次々水を汲んで行きます。
お休みはありません。毎日毎日汲むのです。

その日も天使はバケツに水を汲んでおりました。
そこに一匹の悪魔が通りかかりました。
悪魔は足を止め、暫く天使の仕事を眺めておりましたが、不思議に思って天使に話しかけました。

「君はどうして穴の空いたバケツに水を汲んでいるの。」

天使は答えました。

「それが僕の仕事だからさ。」

「でもそれじゃいくら水を汲んでもすぐに水が漏れて空になってしまう。」

別段気にする風でもなく天使が言います。

「空になったらまた汲めばいいのさ。」

それを聞いた悪魔はしばらく考え込んでおりましたが、やがていい事を思いつき天使にいいました。

「もしバケツの穴を塞いだら、何度も汲み直さなくてもいいんじゃないかな。」

悪魔はとっても良い考えだと思っていたのですが、天使は驚きもせずにいいました。

「そんな事もあるね。」

悪魔は訳が分かりません。天使に聞きました。

「バケツ、直さないのかい。」

天使が水を汲みくみ答えます。

「僕は直さない。たまに神様が直すんだ。」

ほう、と悪魔はため息を吐きました。
やはり神様という奴は偉いのだなと思ったからでありました。
ですが不思議に思いました。天使に聞きます。

「直ったバケツは使わないのかい。」

天使が手を止め、指を差しました。そこにはたくさんバケツが置いてあります。
悪魔は近づいて、バケツの中を覗いてみました。
バケツの中には水がたっぷり入っています。しかし、水は黒く濁っておりました。

「確かに漏れていないね。でも、水が腐ってしまっている。」

悪魔が言うと、天使はまた水を汲み始めながら答えました。

「そのバケツはそれで幸せだから、いいんだ。」

天使は続けて言いました。

「穴あきバケツも、そうじゃないやつも、それが幸せなんだ。」

そんなものかと悪魔は思いました。

悪魔はその後黙って天使の仕事を見ておりましたが、やがて退屈そうに言いました。

「それにしてもつまらない仕事だね・・・ねえ君、そんな仕事より僕の仕事を手伝うといい。」

天使は驚いたように悪魔を見詰め、聞きました。

「どんな仕事だい。」

悪魔は胸を張って言いました。

「地獄の門に花を飾る仕事さ。綺麗で、楽しいぞ。」

天使は暫く考え込んでいましたが、やがてにっこり笑って言いました。

「それじゃあ、僕の仕事と一緒じゃないか。」

悪魔はビックリしましたが、ちょっと考えて言いました。

「ふん、言われてみればそうだね。」

二人は顔を見合わせて笑いました。



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posted by さい at 04:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする


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